2017年7月24日月曜日

ぐるっとパスを持って松濤に行こう! 渋谷区立松濤美術館と戸栗美術館を巡る パート2

渋谷駅から徒歩15分程度の松濤地域にはぐるっとパスの参加施設が2つあります。
ひとつは渋谷区立松濤美術館、そしてもうひとつは戸栗美術館です。
今回はこの2つの美術館をご紹介いたします。

渋谷区立松濤美術館では、7月23日(日)まで「クエイ兄弟ーファントム・ミュージアム」展を開催しています。
一般料金1,000円がぐるっとパスだけで入場できます。
戸栗美術館では、9月2日(土)まで「17世紀の古伊万里ー逸品再発見Ⅰー展」が開催されています。
一般料金1,000円がぐるっとパスだけで入場できます。
7月23日(日)までの期間は、松濤地域のこの2つの美術館をめぐるとぐるっとパスのご利用で、2,000円分の入場券として使えます。


まず、渋谷区立松濤美術館からご紹介していきましょう。
前回も説明したとおり、この美術館の設計は、建築家の白井晟一。1981年の10月に開館し、建物が竣工してから37年以上時を経ています。でも、その古さがまたひとつの魅力となっているのです。

スティーンブン・クエイとティモシー・クエイの一卵性双生児のクエイ兄弟は1947年にアメリカ・ペンシルバニア州に生まれました。
クエイ兄弟といえば、代表作として1986年の「ストリート・オブ・クロコダイル」という人形アニメーションがあげられます。
デコール* 《仕立て屋の店内》1986年 映画「ストリート・オブ・クロコダイル」(1986年)より
不思議で幻想的、陰鬱、でもどこか軽やかなユーモアも感じられる数々の傑作を生み出しています。
*デコールとは、箱の中にアニメーション制作の舞台装置、登場する人形などを配置し、再構成した作品。
アニメーションの制作は、少しずつ場所やポーズを変え、1秒のために25コマを撮影する気の遠くなるような作業を繰り返します。その繊細な作業によって、人形たちに生命が吹き込まれ、動き出します。そんな制作の秘密が垣間見られるのがデコールです。
2階が第1会場で、地下1階が第2会場です。
第1会場にはクエイ兄弟の初期のイラストレーション作品が主に展示されています。
他に、2人が影響を受けたポーランドのポスター作品や、学生時代に制作した映画の紹介もされています。
第1会場の展示風景 学生時代のイラストレーション
第1会場の展示風景 ポーランドのポスター
1967年にフィラデルフィア芸術大学(PCA)で開催された「ポーランドのポスター」展を目撃したことが、その後のクエイ兄弟の創作に決定的な影響を与えました。
第1会場の展示風景 学生時代に制作した映画の紹介
第2会場では、数々のアニメーション作品のデコールを中心に展示がされています。
また、これまで紹介される機会の少なかった映像作品や舞台美術の仕事、これまで行った展覧会の様子なども展示されています。
第2会場の展示風景 映像作品の上映
映像作品をダイジェストで上映するコーナーもあり、9作品が上映されています。全部で20分ほどの所要時間です。こちらも興味深く見逃せない内容です。

デコール 《プラハの錬金術師》1984年 
キース・グリフィス監督のドキュメンタリー映画「ヤン・シュヴァンクマイエルの部屋ープラハの映画錬金術師」(1984年)より

約30年前に公開された人形アニメーション映画「ストリート・オブ・クロコダイル」。クエイ兄弟は日本でもカルト的な人気を誇っています。
あなたもその独自の美の世界に触れに美術館を訪れてみませんか?
きっと今までにない新鮮な刺激を受けられることに間違いありません。

渋谷区立松濤美術館から徒歩5分ほどのところに、全国でも珍しい陶磁器専門美術館である戸栗美術館があります。
9月2日(土)まで「17世紀の古伊万里ー逸品再発見Ⅰー展」が開催されています。
17世紀は、古伊万里の歴史の中でも誕生と技術革新により多様な作品が生み出された時代です。
「かたち」や「素地の白」などなど、15のテーマのもとに個性豊かな約70点の作品が並びます。
《染付 楼閣山水文 鉢》 伊万里 江戸時代(17世紀前期)
初期伊万里としては最大級に属する鐔縁の深鉢。
第1展示室に入ると、まずこの大鉢が出迎えてくれます。
《銹釉色絵 家形香炉》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
テーマ7の「かたち-成形技法」で紹介されている2階建ての家屋をかたどった香炉。香を焚くと1階から屋内を通り、屋根の破風から煙が出る仕組み。じっくりと細部まで眺めたい逸品です。
《白磁 桔梗形向付》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
桔梗形の向付。花弁の可憐な様子を見事に表現しています。
《色絵 葡萄鳥文 輪花皿》 伊万里(古九谷様式) 江戸時代(17世紀中期)
周囲を19に区画した輪花形の大皿。器形・意匠ともに所蔵品の中でも特別な優品とのことです。
《色絵 菊花形皿》 伊万里(古九谷様式) 江戸時代(17世紀中期)
3輪の菊花を重ねた器形に縁銹を施した薄手の変形皿。
《色絵 花卉文 水注》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
注口と把手のついた四方形の水注。
《染付 兎形皿》 伊万里 江戸時代(17世紀後半)
土型に押しあて変形させ、さらに染付を用いて身体を丸めた兎を表現した皿。
《色絵 桐亀甲文 輪花皿》 伊万里 江戸時代(17世紀末~18世紀初
染付の青、上絵の赤・黄・紫・萌黄・浅黄に加えて金彩を施す、贅沢かつ華やかな色遣いの優品。

ここに紹介した数点の作品だけでも、その多彩さが際立っていることにお気づきだと思います。
丁寧な解説文とともに作品を堪能し、あなただけの逸品にめぐり合いに出掛けてみませんか?


■渋谷区立松濤美術館
「クエイ兄弟ーファントム・ミュージアム」
会期:2017年6月6日(火)~7月23日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
※毎週金曜日は20:00まで(入場は19:30まで)
観覧料:入館料一般1,000円 (大学生800円、高校生500円、小中学生100円、60歳以上500円
会場:渋谷区立松濤美術館
渋谷区立松濤美術館には、ぐるっとパスで入場できます。
★次回展
「畠中光亨コレクション インドに咲く染と織の華」
会期:2017年8月8日(火)~2017年9月24日(日)
観覧料:入館料一般500円 (大学生400円、高校生250円、小中学生100円、60歳以上250円


■戸栗美術館
「17世紀の古伊万里ー逸品再発見Ⅰー展」
会期:2017年5月27日(土)~9月2日(土)
休館日:月曜日
    ※毎月第4月曜日はフリートークデーとして開館。
開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
    ※毎週金曜日は20:00まで(入場は19:30まで)
観覧料:入館料一般1,000円 (高大学生700円、小中学生400円
会場:戸栗美術館
戸栗美術館には、ぐるっとパスで入場できます。


★ぐるっとパスは、1冊2,000円で東京を中心とする80の美術館・博物館などの入場券又は割引券がセットになったお得なチケットブックです。使用開始日から2ヶ月間利用可。
詳細はこちらの公式HPをご覧ください。